あまりに純粋な悪
ども、サウナ探偵です。
ついこの前「悪寒」が面白かったので気に入った伊岡瞬氏の出世作「代償」を読んでみた。
すこ〜〜〜しだけネタバレがあるので注意してね。
ストレスなくスルスル読めた「悪寒」とは打って変わって、死ぬほどストレスを抱えながら読むことになった。それはつまり、それほどに刺さったということでもある。
五転六転「悪寒」by 伊岡瞬 感想 中年男性の苦悩と愚かさ ネタバレなし - 鈴と小鳥とそれから私とサウナ
あまりに純粋で混じり気のない疑いようのない「悪」を描くサスペンス。そして弁護人にまで及ぶ悪意の真意を解き明かすリーガルミステリー。目を背けたくなるような事実の数々から、逆に目を離すことができない。
個人的には「代償」の方が5倍"""すごかった"""
あらすじ
平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。「私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか」。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追いつめられた圭輔は、この悪に対峙できるのか?衝撃と断罪のサスペンスミステリ。
代償 (角川文庫)より
鳥肌は立てど血の気が引く小説というのは
なかなかない。
この「代償」には血の気が引くシーンが何度もあった。なんだこの演出力と描写力。
本作中では、達也を人の心をコントロールする天才と位置付けている。いやいやいや、伊岡瞬自身が読者の感情をぶん殴る天才でしょ。コントロールされっぱなしっすわ。
ともすればね、この本をグイグイ読めてしまうっていうのはある種のマゾヒズムかもしれん。それくらいヤバイ。
何度「スーッ」と血の引く音が聞こえたことか。特に前半はページを捲る手が恐る恐るになりつつも全然止まれない。
一貫して死を願わずにいられない
頼むから達也死んでくれ、とずっと願いながら読み進めることになった。
本作の諸悪の根源、安藤(浅沼)達也。こいつの行動、発言、このクソガキを構成する全てが不快。何もかもが悪。ガキのうちに殺しとく以外にどうしようもないゴミ。
こんなこと言うと俺の神経を疑われるかもしれん。そんな風に人の死を願ってはいけないって?うるせえよバカ野郎。
そう思ってしまう人こそ本書を読んでどうしようもない悪を感じてほしい。これほどの悪は、排除する他に致し方ない。
そんな生まれつきの悪党に支払われる”代償”は、生温いと思わざるを得ない。たしかに、痛み苦しみ死んだ方が遥かにマシな仕打ちを生涯受け続けることになるのかもしれない。
が、伝聞でなく俺はそれが見たかったし、圭輔にも直接見て欲しかった。
それほど不快ならば読まない方が良かったか
と問われればもちろんNOである。
こういう作品に出会うために本を読み漁っている。
小説というのはつまるところ疑似体験なので、「いろんな気持ちにさせてくれる本」が神つまりゴッドなのである。俺にとってはね。
「悪寒」を読んだ時に「伊岡瞬ええな〜面白いな〜」と思ったのだけど、本書「代償」で完全に伊岡信者となった俺がいる。ずべこべ言わず読んでほしい。
これほどにいろんな気持ちにさせてくれる本はそうそうない。
好きなセリフ
裁判官「私の法廷を愚弄することは許さない」
おわり。
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