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小松左京「復活の日」感想&ちょいネタバレ これコロナ禍予言書かよ 人類の成長の無さ


バカクソおもしれぇじゃん・・・


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小松左京、エスパーか?

ども、サウナ探偵です。
コロナ禍で再評価されてる「復活の日」by 小松左京を読んだ。

これ、図書館で一回借りたんだけど、1980年発行の角川文庫で字詰めがキツくて全く読む気しねえの。
しかも初出は1964年だろ?前の東京オリンピックの年にウイルスパンデミックで人類滅亡の話って、なんだか因縁めいた何かを感じるよな。
っていうか、エスパー?

まずはあらすじをかくよ

舞台は196X年初春。中国奥地に端を発すると思われる「チベット風邪」が流行する。時期を同じくして家禽の大量死、有名俳優の事故死が発生する。これらにはアメリカが宇宙から持ち帰り軍事研究していた全く未知のウイルスが関係していたが、民衆は知る由もなかった。

チベット風邪は瞬く間に世界中に広まり、”こじらせて”ポックリ亡くなってしまう人が多数。初夏には大パンデミックが発生していた。

「たかが風邪」と甘く見て後手に回る政府の対応。非常事態下で、政府の特別権限を全面的に認めていいのか。そうこうしているうちに医療従事者、インフラを担う人々、軍事関係者などの水際で戦う人々が続々と死んでいく。この病気が何によって引き起こされているかもわからぬまま、なすすべなく数ヶ月で世界人口35億人(当時)は絶滅したかに思われた。

が、生き残った人々がいた。彼らは調査のため南極に滞在中の各国の調査団だった。彼らに残されたテクノロジーは、2隻の原子力潜水艦だけだった…。

出典:俺

感染拡大の様子がリアルすぎる

え?これコロナ禍の話?
1964年?2021年じゃなくて?
政府の決めきれない感じとか軽視しちゃう感じとか、リアルすぎん?
どこまで政府の特別権限を認めるか、みたいな話も、緊急事態宣言下の時短営業要請に重なって興味深い。
もしかして、見てきた?知ってた?

陰謀論信者とか反ワクチン活動家とか逆張りチンパンジーさん達が出てくればもっとリアルだったけどね。そこまではね。

今身をもって体感してるから、より真実味をもって受け取ることができた。感染拡大の描写がすんごいリアル。

次々に死んでいく語り手と神の視点

で、本作、その感染拡大の様子を描くパートが全体の8割くらいある。
ウイルスに打ち勝つ!アクション超大作!って感じじゃない。多分ハリウッド映画のパンデミックモノだとそうなるよね。

本作は相当のページをさいて、感染が拡大する様子を淡々と描写する。

特徴的なのは、明確な主人公が存在しないこと。
各章で語り手が違う。アメリカ人、日本人、イギリス人、その他。どんどん語り手が変わる。それぞれの立場での感染拡大を描写する。そしてあっけなく死ぬ。死んだら交代。

語り手はどんどん変わっていくけど時系列は前後しない。神の視点たる読者には色々な情報が与えられてどんどん真相がわかっていく。

しかし登場人物は断片的な情報しか持たず、解決に辿り着くことができない。

この少しずつ病原体の仕組みや出所がわかっていく感じ、たまらんよね。

人類、成長してねえな

そして人類、まじで成長してねえ。

本作はウイルスパンデミックの形をとっているが、根底にある本質的なテーマは「反戦」のように読める。

詳しくはオチになっちゃうので割愛するけど、冷戦下のアメリカとソ連には、自国が滅ぼされたとしても、絶対にただでは死なない「復讐のシステム」があったんだな。

大陸の人間が死滅しても、なお醜い人間の憎しみよ。

ウイルスモノと思って読み進めるけど、読了したときには、反戦、もしくは人間の愚かさを皮肉った作品という印象が強くなる。
うん、そうだな。反戦ってのはちょっと違うわ。書いといて何だけど。
アイロニー。

タイトルが「復活の日」という妙

んでタイトルよ。内容はひたすらに救いのない人類の滅びを描いているから、「復活の日」ってなんなんだよ!って思うじゃん?何が復活なのさ!って。
逆にそのタイトルが読み進める時の悲惨さに希望を与えてる側面もあるのかな。

当たり前だけど、こんな悲惨な本作でも最終的にはある程度の解決を見せる。
生き残った人類は1万人。当然数々のテクノロジーや文化が失われている。南極探検なんかしてる連中だから女性も圧倒的に少ない。両手両足で数えるほど。この中から次世代を生み出していかなければならない。

この人種入り混じる1万人からはじまる新たな人類の歴史が「復活」なんだな。

世界が100人の村だったら、みたいな。世界が10000人の村になっちまったワケだ。

まとめ

今改めて話題になってる小説「復活の日」を読んでみた。なんつーハードなSFなんだ。飛び道具なしのガチンコのリアルSFだよ。
新型コロナの致死性がもっと強かったら俺たちもこうなってたぞ。
不謹慎かもしれんけど、今だからこそ面白い。今だからこそより楽しめる。悲観しても仕方ないからね。

おわり。

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