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「一億年のテレスコープ」春暮康一 感想 サイコー面白いファーストコンタクト


もう日本のファーストコンタクトはこのおっさんに託すわ。

ども、サウナ探偵です。
勝手にファーストコンタクトの未来を春暮康一氏に託してしまいました。
でもそれでもいいと思います。

一億年のテレスコープ/春暮康一

本作は春暮氏の3作目。
俺は一応全部読んでて、個人的には2作目の「法治の獣」が特大ヒットだった。初めに読んだのもこれ。
んで続けて読んだデビュー作のオーラリメイカーはちょっとノーヒットだった。でもデビュー作がこれなのはトガリすぎ。ハンパねえ人材ってことはひしひしと伝わる。

3作目の本作「一億年のテレスコープ」は法治の獣と同様にファーストコンタクトもの。
法治の獣みたいな短編がいくつも作れるような地球外文明が惜しみなく出てきてサイコー。

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この人の作品は間違いなくハードSFなんだけど、性善説に則ってるのが面白い。
たとえば劉慈欣「三体」は2巻のメイン概念の暗黒森林が示す通り、自分以外の文明に遭遇することはそれ自体リスクで、発見したら即壊滅させるのが定石という世界。完全に性悪説。リスクを最小化するための「ヤられる前にヤれ」
本作でも惑星「希望」の狼族は似たような考えに陥っていた。
文明を作るのはその惑星の頂点捕食者でしかあり得ず、宇宙で出会ってしまった異なる文明の頂点捕食者同士は相手文明を滅ぼさずにはいられない、という考え。
こっちの方が納得できる。確かにそうだろうなと。

でも本作「一億年のテレスコープ」に登場する文明は基本的には善良で友好的。
文明同士は出会って対話することで滅亡へ向かう袋小路を回避できるという仲良しクラブ。
いやそんなことはねえだろって感じはあるけど、希望やね。これが希望。

ほんでこの人の経歴、本作を読んでる間に知ったんだけど、生命工学の修士持ってんやね。
一緒一緒。仲間。俺も生命工学の修士。
俺には絶対こんなすげえの書けないけど。
生物学の造詣が深い人のファーストコンタクトSFなんてサイコーっすわ。

加えて、春暮氏の作る物語は地球外生命の社会のあり方とか文明の成り立ちみたいなところがメチャクチャ作り込まれてて知的好奇心がクッソ刺激されるので脳が喜ぶ。

ただやっぱり「法治の獣」がトップですね。個人的には。

本作は初の長編ってことだったんだけど、まあ割とオチは平凡だった。
ストーリーも悪くはないんだけど、春暮氏が作り出す地球外生命の概念を俺はもっと読みたい。
そう言う意味じゃ法治の獣みたいな短編の方がおれは好みかもしれん。

以上。