なるなるなるほどね。
きのうの春ってなに
ども、サウナ探偵です。
八目迷「きのうの春で、君を待つ」の感想を書いていこう。
デビュー作「夏へのトンネル、さよならの出口」でエモサマー小説をお届けしてくれた八目迷氏の2作目だよ。
話の繋がりとかはないのでご安心を。
前作はウラシマ効果だったけど、今作は時間跳躍。
きのうの春で、君を待つ/八目迷 #読了
— サウナ探偵 (@krsw_lapin) 2021年7月13日
前作もそうだったけど、この人の作品は、SFと思わせといて実はSF要素は味付け程度という特徴がある。
高畑京一郎「タイム・リープ」とかに近い作りなんだけど、根底にあるテーマが「アイデンティティの獲得」なのは好き嫌いの分かれるところっぽい。
俺は好き。 pic.twitter.com/kZJ2q7sni1
あらすじを語る
春季講習をサボったことがバレ、父親に叱られた主人公船見カナエは、故郷の離島、袖島(そでしま)へと家出する。
散歩で訪れた廃公園で石碑に触れた瞬間、カナエの意識は4日後に飛んでいた。
この空白の4日間に、島の幼馴染である保科あかりの兄が死んでいた。葬儀の後、あかりから廃公園に呼び出され、告げられる。
「カナエくんは、これから時をロールバックすることになる。戻った世界で、兄を救ってほしい。」
という話。
出典俺
つかみは抜群
つかみは抜群なんすわ。
タイムリープ現象を「ロールバック現象」と表現してるのもいい。
ロールバックっていうのはIT用語で、データベースに加えた変更を、ある期間内でなかったことにする処理のこと。ちょっとだけ時間を戻す。
謎の現象にカッコいい名前、期待を煽りますな。
そして離島住みショートカットヒロイン。影のある雰囲気。
閉じた環境。抜け出せない貧困。
いいですね。好きですね。
田舎 & 都会からくる奴って構図が好きなのかな、八目氏は。
前のもそうだった。
ちなみに前作はこれ。「夏へのトンネル、さよならの出口」
つかみとテーマの相違
この作者の作品は、前作もそうだったのだけど、SFと思わせといてSFじゃない。
SF要素はキッカケにすぎず、本質的にはそれによって何かに気付かされ、「アイデンティティを獲得」する成長物語の形をとっている。
これ自体は別にいい。SFというのは方法論であり、テーマというのは作者の本当に書きたいことだから。
SF設定を餌にして、自分が本当に描きたかった少年少女の青春成長物語に引きずり込む方法論といえそう。
前作にしても今作にしても、不思議現象は唐突に発生し、特に原理も説明されず、なし崩し的に受け入れられる。そこは重要じゃないから。
だがこれは読む人によっては多大なストレスになると思う。
序盤のSF要素で物語に引き込まれた人は、「何が起きたんだ?!おもしれー!最後はどうなるんだろう!」って仕組みとかSF要素に絡んだ結末について期待を膨らませる。
タイムリープモノって、最後に全てのピースがきっちりハマって、怒涛の伏線回収!キモチー!みたいのがセオリーというか期待されるところだと思う。
でも本作にはそういうのはない。
個人的な感覚では、SF設定で読者を面白がらせておいて、最終的にはないがしろにされてるって印象。
ゴリゴリのタイムリープラノベが読みたければこっち。
抜群に面白い。タイム・リープにきちんと焦点が当たってる。
だから本作は
タイムリープモノである必要性
は、ほぼない。ように感じられた。
1日進んで2日戻るっていう圧倒的な独自性があるのに、それがほとんど生かされてるように思えない。1日進んで2日戻ることに大して意味がない。
主軸となるストーリーと、SF設定が乖離してるように思えてしまうんだな。
かといってSF要素を抜くと凡庸なノスタルジック系青春ラブストーリーになってしまうというのは、あると思う。
前作「夏へのトンネル、さよならの出口」もそういう感じだったので、本作は”そういうスタンス”で読んだので俺は問題なかった。
そうじゃない人には肩透かしかもしれない。
こういう話書く人、他にもいたよな
でもまあこの「SF要素はつかみで、本質は少年少女の成長物語」ってのは新海誠とか細田守のやり口に近いものを感じるし、好きな人は好きだと思う。
新海誠とか細田守の映画にSF的な細かいとこ期待してないじゃないですか、誰も。
ここはもう視聴者のスタンスが確立できてるかって話だと思うわ。
八目迷氏の小説をそういうスタンスで読むっていう土壌がまだないだけ。
ただ、SF要素で「ちょっと面白い設定の小説があるらしい」って読者を掴むのであれば、SF要素には落とし所をつけた方が満足度は高そう。
まとめ
ってちょっとキツイようなこと書いてしまったけど、俺は好き、この小説。
好き嫌いの分かれそうなのはすごく感じる。
整合性やギミックに着目してしまうと疑問が残る。
でもまあラノベだし。ラノベのテーマといえば少年少女のアイデンティティの獲得ってのが鉄板だし。少年少女の内面にフォーカスしてれば基本OKってのはあるよね。
夏、春と来て、次は何かと思ったら「ミモザの告白」というタイトルらしい。
秋か冬かと思った。
てかこの2作は「<時と四季>シリーズ」っていうんだな。
次の「ミモザの告白」はこのシリーズじゃないって位置付けなのかな。だとしたら期待値上がる。
おわり。
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