寄河景(よすがけい)は宮嶺(みやみね)を愛していたのか、それとも利用していたのか。
150人を殺した美少女と、1番近くにいた少年の話
ども、サウナ探偵です。
斜線堂有紀「恋に至る病」を読んでみたよ。
斜線堂有紀氏といえばこのミス6位の「楽園とは探偵の不在なり」が記憶に新しい。
まあ俺は楽園とは〜はあんまり合わなかったんだけど。
一方、こちらの「恋に至る病」は著者の作品の中で””1番売れてる””作品らしく、期待大であった。
結論、大変満足した。これは大当たり。
いつもはこういうラストの解釈を読者に放り投げるタイプの話は嫌いなんだけど、これは気に入ったなあ。
話を簡単に要約する
あらすじを簡単に要約してみる。
主人公の宮嶺(みやみね)は幼少期のある事件から、不思議な魅力を持つ美少女、寄河景(よすがけい)と仲良くなる。それをよく思わないクラスメイトから壮絶ないじめを受けるが、加害者の死亡によりいじめは終わる。
高校に入ると宮嶺と景は恋人同士となった。
一方で身の回りで「青い蝶」と呼ばれる自殺教唆ゲームが噂されるようになった。その主催者は、小学生時代に宮嶺が受けたいじめを見て人間に失望した景だった。
「恋に至る病」は、「流される人間」を粛清していく少女と、その1番近くにいた少年の、歪な関係を描いた作品だ。
グイグイ引き込まれる
もうね、引き込みがすごい。いつまで経っても話が動かない小説って苦手なんだけど、そんな暇を与えず話に引き込んでくる。
寄河景の人物像は、デスノートの夜神月のようなイメージ。ある信念を持ち、それにそぐわない人間を人知れず消してゆく。直接手を下さずに。
その方法は、ある簡単な指示をつづけるだけ。なぜそれで人が死ぬのか。気になって仕方がない。
そんな残酷な景だが、他者からの印象は顔よし性格よしの「完璧美少女」。裏の顔を知る者は宮嶺を除いて存在しない。
衝撃作の呼び声にふさわしいエグさの内容だった。読み終えて数日は本作のことしか考えられなくなる。
そんな強烈な印象を植え付けてくる問題作。
元ネタがあるらしい
本作品で題材となっている自殺教唆ゲーム「青い蝶(ブルーモルフォ)」には元ネタがある。
「青い鯨」という実際にロシアで発生した自殺コミュニティが元となっているようだ。
詳しくは割愛するが、簡単な指令に答えていくと、最後に自殺してしまうというもの。
名前を鯨から蝶に変えてまるっきりそのまま使った感じ。とは言っても、舞台装置として流用しただけである。ストーリーそのものは、主人公である少年と少女の歪な関わりを描いたものだ。
ネタバレ考察
本作のポイントは「寄河景の本心」である。
殺人を繰り返す化け物となってしまった寄河景の秘密を知る人間は1人、主人公の宮嶺である。
なぜその1人に宮嶺が選ばれたのか。そばに置いておくただ1人として。
2つの解釈がある。
(1)本心から恋人だったから。
(2)いざというときのスケープゴートにするため。
結論から言うと、個人的な解釈では(1)だと考えている。なぜならば(2)では""宮嶺でなければならない理由""がないから。もっと操りやすい人間はいくらでもいたはずだ。ただ、話はそう単純ではない。
作中であまり言及されないが、宮嶺には他とは違う何かがあったのだろう(その何かが大事なところなんだけど読解力が貧弱で読み取れない)。
それが、他者を思い通りに動かしてきた景に「歪な関心」とも言うべき感情を抱かせた。
それはそばに置きたいという所有欲だったかもしれないし、どうにかして思い通りに動かしたいと言う支配欲だったかもしれない。
いずれにせよ、宮嶺に対してその他大勢とは違う「特別な感情」を抱いていたことは間違いない。それを恋愛感情と言えるかは微妙なところだが、景のような人間が、世間一般の恋愛の形に当てはまるのも想像できない。景にとってはこの歪な関心こそが、他者の恋心にあたる感情なのかもしれない。
解釈のキーとなる消しゴムを盗った時に、確たる感情があったのかは、最後までわからない。
っつっても想像だけどな。サイコパスさんの頭ん中なんて俺にはわからん。サイコパスではないので。
とか言い出したらなんで小説なんか読んでんのって話になりそう…。
おわり。
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