完成度が高すぎる…。これデビュー作ってマジ?
ちょっとイヤな気持ちだけど爽快
ども、サウナ探偵す。
「告白」by湊かなえ、今更紹介するまでもない、イヤミスの女王の大傑作。映画を先に見てたのもあって読んでなかったんだけど、ちょっと覗いてみたら一気読みしちった。
小説としての完成度がマジで強すぎる。
告白/湊かなえ #読了
— サウナ探偵 (@krsw_lapin) 2021年7月11日
映画は10年くらい前に見た記憶。
教師の娘が生徒に殺されたってことと、爆発シーンだけは覚えてた。
ヴァン・ダインの二十則「地の文で嘘をついてはならない(意訳)」に真っ向から 喧嘩を売る全編モノローグというふざけた構成。これがマジで効いてる。
デビュー作?マ? pic.twitter.com/3wk7y64kcQ
あらすじを語る
3学期の終業式後のホームルーム、担任教師の森口は教壇に立って静かに言った。
「私の娘はこのクラスの生徒に殺されました。」
森口は復讐のためにあることを行なったと告白し、教職を去った。
その後、事件に関与する様々な人物の視点から、彼らの事件への認識、その後の生活が語られる。手紙、日記、ウェブサイトの投稿、といった主観的な記述をもって。
果たして復讐は完遂されたのか。犯人の少年たちが行き着く先とは。
と、いう話。
出典俺
ヴァンダインの二十則
「ヴァンダインの二十則」というのがある。
ヴァン・ダインの二十則 - Wikipedia
推理小説を書く上で、これを守らなければフェアじゃない。物語が破綻する。なんでもアリになっちゃうっていう指標の一つ。
似たようなものに「ノックスの十戒」てのもある。こっちの方が知ってる人多いかな。
この「告白」は推理小説ではないんだけど、本作を読み解くのに非常に重要な要素になる。
着目すべきヴァンダインの二十則は以下だ。
作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者をペテンにかけるような記述をしてはいけない。(Wikipediaより)
噛み砕いて言うと、作中人物は嘘をつくかもしれないけど、神の視点たる地の文では嘘をついてはいけない、ということ。
作中の人物は血の通った人間(ということになっている)ので、騙そうとしたり、見間違えたり、誤解したりする。信用できないかもしれない。
でも地の文では正しいことのみが書かれるべきだ。という姿勢。
本作のふざけた構成との親和性
本作「告白」、ほぼ全ての記述が演説、手紙、日記、手記などの""登場人物が書いた文章、発言""の形をとっている。要するに、地の文として扱える部分がない。つまり、ほぼ全編を通して正しいことが書かれているとは限らず、疑ってかかる必要がある。
ヴァンダインに喧嘩を売ってるとしか思えない。(称賛)
特徴的なのは、章ごとに視点人物が変わるという点。多分に主観が語られ、憶測が飛び交う。
ひとつの事象に対して、読者はコロコロと認識を変更していくことになる。
これがストレスであり、面白いところだ。結局何が正しかったんだと。推理小説ではないものの、叙述による印象操作が独特のヤな感じを生み出している。
「地の文は嘘をつかない」と言うルールを知る人は構成の巧みさに唸り、知らない人はこのルールを自ら導くことになる。
イヤミスとはなんなのか
本作を「イヤミス」と呼ぶ向きがある。イヤな気持ちになるミステリー、の意味だけど、俺は全く逆で、ある種の爽快感すら感じてしまった。
嫌でも思い浮かぶのは映画ジョーカー。
こちらも各所で「やりきれない」だの「鬱」だのと称されていたが、俺には爽快なストーリーに思えた。
というのも、どちらも背景に少し暗い部分があるだけで、本質的には「仕返し」のストーリーだからだ。
(ストーリーの本質は仕返しだけど、小説としての本質はまた別だと一応注記しておく。)
つまり、やられたら倍返しの半沢直樹、俺の娘をさらったカス全員ぶっ殺す!のコマンドーと図式が同じなのだ。
娘を殺されたのにやり返さない方がよっぽど「やりきれない」し「鬱」だろ。
むしろ徹底的にやってくれてハッピーじゃね?
もちろん陰鬱な気分になる点もわかるのだけど、それだけってなると話が読めてないように思える。
まあ、作者の性格がねじ曲がってそうってのは、わかる。ぜひともさらにねじれてほしい。
まとめ
「告白」とはなんともうまいタイトルだと感心した。全ての章で視点人物が変わり、全てがそれぞれの「告白」だった。
そこに含まれる「主観」の曖昧さや「信念」の危うさ、「執念」の恐ろしさなど、とにかく見どころが沢山ある。
いろんな味がする小説。
湊かなえって映画とかドラマは何本か見たことあったけど、意外と本は読んだことなかった。
もったいねー。もっと読も。
おわり。
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