待ちに待った2巻
ども、サウナ探偵です。
「ミモザの告白2」by八目迷、出たね。やっと出たね。待ち疲れて老人になった。
このラノ4位っつーことでね、おめでとうございました。
楽しみにしておりましたよ。
そんで読んだ感想。
3巻はよ!!!!
前巻のおさらいと本巻のあらすじ
前巻では、主人公咲馬の幼馴染汐が「身体が男の女」であることを表明した。困惑しながらも受け入れる者、拒絶する者、関わり方が分からず離れる者、様々な反応があった。
汐は咲馬に対し、幼馴染以上の恋愛感情を抱いていた。一方、咲馬は汐を支えることをきっかけとして仲良くなった星原夏希に好意を抱いていた。
汐は自らが性的マイノリティであることから成就しない惨めな感情に耐えかね、咲馬と衝突する。
咲馬の決意を聞いて感極まった汐は衝動的に彼にキスする。それを星原夏希に見られていた…。
っつーのが1巻までの話。
詳しいことは前回の記事をどうぞ。
www.sauna-detective.com
で、2巻はその続き。
星原夏希に誤解されたまま夏休みに入ってしまう。
咲馬と夏希のぎこちなくなってしまった関係修復のために、3人で水族館に遊びに行った。そこでまた一悶着起こる。
新学期になり、文化祭の出し物がロミオとジュリエットの演劇に決まる。推薦を受けた汐は、のり気でないながらもジュリエット役を引き受けるが…。
みたいな感じ。
悪意による苦しみから善意による苦しみへ
1巻は「性的マイノリティを題材にするならそういう展開になるよね」という、言わば""お約束""の展開だった。具体的には西園アリサによる拒絶と修正がそれにあたる。
身体が美男子なんだから男のまま生きたほうが得だ。周りを困惑させるな。女装をやめろ。というように。汐は、無知から派生した悪意による苦しみを受けることになった。
西園アリサ視点では「間違ってるから直してやる」という歪んだ善意なのだが、一般には悪意と言えるだろう。
一方で2巻では、汐が明確な悪意に晒されることはない。水族館での出来事にしてもロミオとジュリエットにしても、そこには善意しかない。
それにも関わらず、2巻での汐は1巻時点よりもつらく苦しんでいるように見えた。
善意しかないのに全員が傷つき、不本意で、思ったように幸せになれない。
私は2人を応援したくて。私は汐ちゃんが喜ぶと思って。俺は汐を一人にしたくなくて。
相手を慮って、良かれと思ってした善意の行動が、困惑を与え、苦しみを抱かせる。
汐の性的マイノリティに過剰反応しているのは、もしかしたら咲馬や夏希の方なのかも知れない。
自問自答の破壊力
本作の自問自答の破壊力は2巻でも健在だった。
本シリーズには「咲馬が自らの浅はかさに気づき、愕然とする」というくだりがある。晴天の霹靂である。
1巻でのそれは、「西園アリサが汐に言った『気持ち悪い』と、自分が恋愛的に不誠実な相手に言った『気持ち悪い』は本質的に同じなのではないか」ということだった。どちらも自らの価値基準を神とした偏見なのではないか、と。
2巻でのそれはさらに強烈である。「汐を気にかける気持ちは、自分が優位に立ちたいという歪んだ庇護欲なのではないか」である。
咲馬は、文化祭で汐が一人になっていないか気にかけていた。必死に探すも、他の友人と楽しそうに文化祭を回る汐を見かけ、寂しさを覚える。そして気づく。これは”期待はずれ”なのではないかと。
一人でいる汐に手を差し伸べ、感謝されることを期待していたのではないか。俺は、一体なんなんだ。
この地の底に落とされたような気づきが本作の1番面白いところだと思ってる。
ここが本当に読み応えがある。
全くライトなノベルじゃねえ…。
汐は「身体が男の女」
少し本編とは離れた話をする。
汐は「身体が男の女」である。「心が女の男」ではない。
これは似ているようで全く違う。被修飾語を考えれば明らかであるが、前者の本質は女で、後者は男なのだ。
みんながどういうイメージなのかTwitterで聞いてみた。
やっぱり外見の印象が強く出るらしい。
※ちなみに作中では汐が”トランスジェンダー”だとは一回も記載されていないことに注意されたい。ちょっと気になったので教えてください。
— サウナ探偵 (@krsw_lapin) 2022年1月29日
「トランスジェンダーの女性」
という言葉から連想するのはどっち?
※辞書的な定義は度外視して
個人の本質は自我であることに疑いはないと思う。なぜならば遺伝子で決まるのは先天的な形質で、精神は成長過程で後天的に発展するからである。生まれた時点(形質が決定した時点)では自我は無いのだから。
であるとすれば「心が女の男」という状態は概念レベルで存在し得ない。
ゲームの操作キャラクターが女だからといって、プレイヤーが女ということにはならない。この考えを拡大すれば、現実の身体もまた「自我により操作されるキャラクター」であり、その形態が男型か女型かは瑣末な問題にすぎないのだと考えられる。
本作を読んでいる間は実はそういった考えをあまり考慮しておらず、汐を「心が女の男」として読んでいた。これは明確に誤りであり、そう読んでる限り、本作を正確に理解しているとは言えないだろう。
だから俺は2回読んだ。
もしこの視点の考慮を無しに読んでいた方は再読してみていただきたい。
ミモザの告白2/八目迷 #読了
— サウナ探偵 (@krsw_lapin) 2022年1月19日
本編とは関係無いが、汐のことを”心が女の男”と捉えて読んでいる自分に気づいて愕然とした。
本作は徹底して定義語を使わずに性的マイノリティを表現している。が、この捉え方は正しくない。
汐は”身体が男の女”なのである。#ガガガ新春プレゼント pic.twitter.com/AOhU2n4DaM
まとめ
「ミモザの告白2」by八目迷の感想を書いてみた。
1巻を初めに読んだ時、これはバケモン級の傑作が始まったな、と思った。
2巻を読んでこれは間違いではなかったと確信するに至ったわね。
全体としてさまざまな「善意」を扱ったのが2巻であったように俺は感じ取った。
一応本巻では大きな禍根を残さずに終わっているが、果たして3巻では何が起こるのか。どんな感情をひっ掻き回してくれるのか。非常に楽しみですね。
おわり。
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