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1番面白い「ミモザの告白3」八目迷 感想&ネタバレ考察 どうやったらこんなに面白い小説が書けるんだ


3巻も”””ガチ”””だったな…。

待ってたよ!待っていたよ!

ども、サウナ探偵です。

でた!ミモザの告白3
読んだ!ゴーッッド!

2巻から約1年。間に「琥珀の秋、0秒の旅」を挟んでの3巻。
待っていたよ。俺は待っていた。

前回までのおさらい

本作、ちゃんと読みたいので新刊が出ると前の巻を一度読み返すことになる。

1巻では汐くんが汐ちゃんとして生きていくことを表明した。周囲の困惑や拒絶、無理解、好奇の目にさらされながらも新しい人生を歩み始める。咲馬と夏希は汐を応援し、寄り添う。身体が男性の汐は”女として”男である咲馬に好意を持っている。

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2巻では、1巻のラストシーンが原因となって、汐、夏希、咲馬の3人はギクシャクしながらも共に過ごしている。
勘違いやすれ違いを繰り返しながら文化祭の演劇を経て、しっかりと「対話」をしていこうという結論に至る。

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2巻で雨降って地固まった感のある彼らのこれからが描かれるのが3巻。

ブッ込んできたなあ

と思ったのが、「トランスジェンダーとスポーツ」という題材。
(作中で汐がトランスジェンダーとは明記されていないことは何度も言っておく)

トランス題材の中でも激重いテーマの一つじゃないですかね?論争を呼ぶという意味で。
まあそんなに掘り下げがあったわけではないのだけど。あんまり思想出すと危険だからな、この辺りは。

作中のリアルタイムがガラケー世代(多分作者とか俺くらいが学生のころ想定?)であることを考えると、今ほど性的マイノリティに関する認知度って高くなかったと思う。
球技大会で身体が男の人が女子枠で出てたら、「出場時間に制限をつけます」くらいではこんなに理解は得られないのでは??優しい人間が多いな、この世界。

メイン人物以外に焦点が当たる3巻

とはいえやはり認めない側の人もいて、それがかつて陸上部で汐と走っていた能井とクラスメイトの西園アリサ。2人とも一巻から敵役として登場している。
本巻では彼らに焦点が当たる。男だった汐に抱いていた好意と、女になった汐を認めたくない感情の掘り下げが行われる。

作中のおそらくリアタイである2000年代後半〜2010年前後くらいの時って、こういう反応の方がむしろ多数派だったかもな…とも思う。

俺が性同一性障害という概念を知ったのは多分小学校か中学校で見させられた道徳ビデオだったと思う。2000ゼロ年代。でも踏み込んで考えるようになったのは本作の一巻を読んでからだったな。

つまり身近でない人からしたら性自認の概念はそんくらい無関心で、どうでもいい話なのだと思う。

無関心と無理解の狭間

能井やアリサも、おそらく無関心な概念だったであろうところに「すごく身近な人間がそれと判明した」ことに戸惑ったんだろうね。
背景の多くの人物は、それほど汐に身近でもなかったから、「汐くんは汐ちゃんになったんだね〜」で済んでいるのかも。無関心な概念が無関心な人物に適用されただけだから。
能井やアリサにとってはそうではなかった。

ただし、理解を超えるものを理解しようとするか、排除しようとするかが、戸惑いの後の行動の違いに現れたのだと思う。
言うまでもなく、前者は咲馬や夏希、後者が能井やアリサだ。

八目作品恒例シーン

八目作品において、「自らの不覚に愕然とするシーン」は不可欠だ。ここが見どころだと俺は思ってる。自分の偏見に気づいていなかったり、助けてるつもりが庇護欲を満たしているだけであったり。””自分の主観からの常識が普遍ではない””ことに気づくシークエンスがある。
1,2巻とも主人公の咲馬がその役割を担っていた。

だが本巻ではカバーガールが担当することになる。西園アリサだ。

彼女は1巻から一貫して汐アンチ。その真意は男だった汐への好意だ。
早く女装をやめろ、汐は男でいる方が””得だ””というのが彼女の主張。
明記はされていないが、おそらく「得だ」ということには「私にとっても」という意味合いも含まれているように思う。

プライドの高い性格と汐アンチを貫く過程で、彼女は孤立していった。本巻ではアリサの孤立は決定的なものになり、退学の瀬戸際にまで迫る。

本巻のラストでは一つの決着がつけられる。その過程のアリサの自問自答が見どころ。よくもまあこう読者に耳の痛いもんが書けるわ。人間が書けすぎだろ。

一方いつも自らの不覚の雷に打たれている咲馬は本巻では割とうまくやっている。
というのも、前巻で宣言した「対話をする、言葉にする」ということを実践しているためディスコミュニケーションがおこりづらくなったのだ。

そら毎回同じ人物がガーン!そうだったのかァー!!ってなってたら何お前バカなの?ってなるもんな。

世良、嫌いすぎる

いるよな、こういう斜に構えた正論クソ野郎のくせに陰湿な奴。
首突っ込んできて引っ掻き回すだけ
災厄しか振り撒かねえ。
いらんことしい。害悪オブ害悪。

こいつが作者の中でどういう位置付けのキャラクターなのかメチャクチャ気になるな…。
本巻では、悪側だった人たちの内面や、善側と思ってた人の異常性が描かれた。
この世良だけはまだ底が見えねえんだよな…。
悪であってほしい。同情の余地のある過去 みたいなの出てこないでくれ…!俺に世良を憎ませてくれ…!

論理的に批判できずに感覚で嫌いというのはまさに1巻で世良が指摘したことに当てはまってしまうんだけど、こいつに関しては「余計な首を突っ込むな」の1点に尽きる。
「首を突っ込むのは僕の自由だよ?笑」みたいなリベラルクソ野郎返しをされるだろうけど。腹たつわー。
問答無用でアリサがボコボコにしたシーンは大変気分が良かった。
世良がボコボコにされるのを楽しめ。

まとめ

メイン人物以外の周囲に焦点が当たる巻と思いきや、しっかりと汐と咲馬の関係性も次のステージに進む。
周囲の人物に焦点が当たることの意味がラストに繋がっていたとは。自己肯定感の書き方が真っ当すぎる。次巻もクッソ楽しみ。

ほんで真島怖すぎだろ。メチャクチャいい奴じゃねえかってここにきて株爆上がりだったのにゾッとするわ。
小説がうますぎるわ。どうやったらこんな面白い小説が書けるんだ。
このライトノベルがすごい!1位(俺調べ)

おわり。


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