サウナ探偵だ。
薬にも毒にもならない話をする。
小学生時代、通学路に飲み屋さんがあった。
居酒屋ではない、ただの民家なのだが、小学生に飲み物を無料で振る舞ってくれるため、”””あの家は飲み屋さんだ”””という噂がまことしやかに囁かれていたのである。
俺は小学生ながら、イヤイヤみんな何言ってんのそんなワケないでしょ、ただの民家なんだから、迷惑じゃないの、馬鹿なんじゃないの、って思っていた。
が、小学生の俺にとって”””飲み屋さん”””の響きは強烈だった。
小学生の憧れと言ったら、スポーツ選手、アイドル歌手、パイロット、消防士、パン屋さん、etc…
俺は「飲み会」だった。
父親がたまに顔を赤くして楽しげに帰ってくる日。飲み会の日。飲み会っつーのはどんなに面白えもんなのかと。今ならわかる。当時の俺は(今もだけど)未知の遊びに興味津々だったのである。
近所の商店で駄菓子とジュースを買い込み、友達の家の縁側で飲み会の真似事をやって未来に想いを馳せていたのである。
結局、興味に負けて仲間数人とピンポンを鳴らしてしまった。
「のみやさん!ジュースください!」
今思うと、あれは多分”””野宮さん”””だったんじゃねえかと、思っている。
影響力のあるバカの小学生が1人、野宮さんを飲み屋さんと思い込んで、学校中にバカの噂を流してバカ小学生が集まってしまったのだ。
嫌な顔せずジュースを振る舞ってくれた野宮さん、多分神だと思う。
多分。
そんな噂の強い影響力を題材にした小説「噂/荻原浩」をおすすめする。(急に)
おわり。