もし飲み会に向かう電車の中で読んだら、目的地の駅のホームのベンチで最後まで読んでしまい飲み会が終わると思う。
というくらい引き込まれた。
こりゃまたすごいのが
ども、サウナ探偵です。どうも。
この一冊ね、すごいですよ。
「心音」by 乾ルカ
クソデカため息不可避だろこんなん。
お前はもっと幸福になっていいよ。
なんなんだよ…。
あらすじ
一億五千万の募金を受け、アメリカで心臓の移植手術を受けた少女、城石明音。
人々の好意を一心に受け、九死に一生を得た幸福な奇跡。
一方で、同時期に目標の募金額を集められず命を失った、もう一人の少女がいた。
生き残った彼女は成長し中学生になる。学校で受ける壮絶な迫害。
つけられたあだ名は「一億五千万円さん」
生き残った彼女を待ち受ける人生は、果たして希望か絶望か。
出典:俺
こういう幸薄少女が他者の悪意に晒される話
好きすぎる。
この渦中の人物の人生を他者が連作短編方式で語る形式は、早見和真「イノセント・デイズ」を思い出す。
あれも救いがなくていいんだよね。
どこまでも不幸で、どこまでも絶望で、歪んだ希望が少しある。
本作「心音」も、とある少女の救いのない話だ。
不治の心臓病から生き延びた少女が、これから人生を歩んでいこうという希望を手にいれた少女が、母親から、同級生から、社会のあらゆる者からあんまりな仕打ちを受ける話。
こんなん現実に起こんの??
本作、他者からの悪意が凄すぎる。
逆恨みする者、初めから迫害の目で見る者、知った途端態度が変わる者、後から手のひらを返す者。
そういうこと、起こんの??心臓病から生き残った人に対して???
というのが信じられない。どういう世界??
無関心であるのならまだしも、攻撃をするというメンタリティが理解できん。
1億5千万で人から買った命を生きている??だって?よくもこれほど醜悪な悪態が出るもんだわ。
正義感でやってるんだからマジでタチ悪りぃよ。
さらには人間の悪意が介在しない偶然ですら、彼女を追い詰めていく。
作者はなんかスゲェ人間の悪意を向けられながら生きてきたのかと心配してしまうほど。
責任を持つという呪縛
これほどに他人から不条理な態度を取られるにも関わらず、明音は完璧な外面を崩さない。
その理由は、小学生の頃から母親から言われていた、「一億五千万円の責任」だった。
この母親がマジでクセ者で、明音が周りからの迫害に対抗したり権利を主張できず不幸になっていくのは完全にこの母親の洗脳が原因なんすよ。
最後にはなんか母の真意がわかったみたいな流れで絶望的な希望を持つに至るんだけど、全然理解できねえの。
この小説全体的に超好きなんだけどラストは全然納得いかねえのよ。もっと自分の幸福を追って生きてくれ。
まとめ
「心音」乾ルカ、またすげぇ小説に出会っちまった。
TLで読了ツイートしてくれてた誰か、マジサンキューな。
心臓移植のために募金するって実際によく聞くけど、移植した後の彼らの人生って考えたことなかったからすごく新鮮な小説だった。
少しの希望と圧倒的な絶望が交互に押し寄せる暴力的な小説を読みたい人はぜひどうぞ。
おわり。
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