鈴と小鳥とそれから私とサウナ

令和のファイト・クラブ「モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件」 駄犬 感想


勝ちたければモンスターの肉を食え!!!


でもミスると死ぬ。

なぜならば毒があるので。

ども、サウナ探偵です。
ぐう面白いファンタジーコメディがありました。

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件/駄犬

同時刊行の「誰が勇者を殺したか」がクッソ良かったから読んでみたんだけど、こっちもクッソ面白かったよ。
徹頭徹尾エンタメやわ。
デヴィッド・フィンチャー「ファイト・クラブ」の履修が必要なラノベってなんだよ。

あらすじまとめたから見て

あらすじ

小国の王子マルスは、次期国王の座を奪いたい貴族から命を狙われていた。
具体的には食事に毒が盛られていた。
だから城で出される飯が食えない。

「せや!城を抜け出してモンスターを狩って肉を食うんや!(天才)」

でもモンスターの肉にも毒があった。食ってたら慣れた。慣れたらもっと強い(=肉の毒性も強い)モンスターも食えるようになった。
しかもモンスターを食うごとにその力を取り込んで強くなった

いつの間にか国で最強になってた。
暗殺者も返り討ちにできるようになってた。
血気盛んな奴らの頂点に立たされてしまった。
一番強い奴(ファースト)のさらに上の頂点、不可侵領域「ゼロス」と呼ばれるようになってしまった。

何だそれ…。

っておもうじゃん?

が、読んでみるとクッソ面白い。
完全にデヴィッド・フィンチャー「ファイト・クラブ」

実際影響を受けているとのこと。
どいういう話かというと、酒場の地下で週に一回開かれる本気で殴り合う集まりの話。
憎しみとか利害とかは一切なく、こぶしで語り合うというだけの集まり。人をぶん殴る楽しさ。痛みを感じられる喜び。生きてるって感じ。

本作もそういう話。

腕力で語り合って序列をつけるグループ「ハンドレッド」の頂点に立ち、血気盛んな奴らを引き連れた王子が謀反して国王になって周辺諸国もボコボコにする話。

本人の意思に反して。

だって死にたくなかったから肉食ってただけだからね。暗殺者から身を守るために強くならざるを得なかっただけだからね。別に政治に興味はないのだよ。平和に暮らしたいだけなのだよ。

でもワイルドにモンスターの肉を食って腕力で頂点に立つマルス(ゼロス)にみんな心酔してっから。みなまで言わずとも「〜ってことっすね?!さすがゼロス!考えることがワイルドだぜ」ってなもんで。
深読みして勝手に色々やってくれちゃうんだわ。血気盛んだから。

このハンドレッドっつー存在が面白いやね。
加入条件はただ一つ!モンスターの肉を食うこと。
これが信条、中心教義、セントラルドグマ。

俺TSUEEEの一種ではあるんだろうけど感覚的にはコメディ色が強い。
なんだろう、内田けんじ監督作品みたいな。

「〜〜な件」みたいなタイトルってあからさまになろうラノベすぎて普段なら絶対に手が伸びない。表紙もいかにもなろう感。
んだけど、本作は同時刊行の「誰が勇者を殺したか」がクッソ良かったので読んでみた。

「誰が勇者を殺したか」は大真面目なハードファンタジーで今年読んだラノベで一番くらいに良かった。本作は期待半分不安半分だったんだけど杞憂でござったな。 「誰が勇者を殺したか」はシリアス:コメディ=9:1って感じだったけど本作は1:9って感じ。
同じ作者でこんだけ振れ幅があってどっちも狙った方向の面白さがあるのはすごい。

なろうでの連載作が他にも書籍化予定らしいので楽しみやね。