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「竜殺しのブリュンヒルド」東崎惟子 感想 果たすのは、愛する人の信念か、愛そのものか


また一人、好きな作家が増えちまったな。

竜の娘の竜殺し

ども、サウナ探偵です。
第28回電撃小説大賞銀賞の「竜殺しのブリュンヒルド」by東崎惟子 をご紹介。


「ひがしざき」じゃなくて「あがりざき」な。間違えんなよ。

この話を一言で言うと、父親の竜を殺された人間の少女が、父親の竜を殺した実の父親をぶち殺すべく頑張る話。

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まあ、あらすじをまとめてみたから読んでみてくれ。
単巻作品できっちり完結してるから手を出しやすいよ。

あらすじ

少女は、神に使える竜と共に、エデンと呼ばれる島で暮らしていた。
島に眠る想像もつかない資源を求め、島に侵攻する人間。竜の反撃により戦闘員が一掃された後に残された幼子が彼女であった。

人間の科学力は発展し、ついに島は攻略された。竜は死に、少女は致命傷を負った。

保護された半死の少女には、最愛の竜を屠った貴族の男と同じ紋章の刺青があった。
彼女は、竜殺しの一族ジークフリート家の娘、ブリュンヒルドだったのだ。

出典:俺


徹頭徹尾、復讐譚

本作の気に入ったところは、とにかく徹頭徹尾復讐譚であるというところ。
変に和解したりせず、絶対にぶち殺してやるという強い意志を最後まで突き通すところがまじで最高。

まさに臥薪嘗胆。
どうしても自分の手でぶち殺せないとわかってしまった唾棄すべき敵を、どうやって亡き者にするか、頑張って考えんのよ。
健気だねえ。がんばれがんばれ!

それが成功するかどうかは、「竜殺しのブリュンヒルド」を読んで確かめてくださいよ。

オオカミに育てられた少女の本を読んで、彼女が涙した本当の意味がわかるシーンは鳥肌モン。

愛する者の信念か、愛そのものか

でもまあやっぱり葛藤はあるわけで。

最愛の竜は、「他人を憎んではならない」「死は怖いものではない」と少女に説く。
神に仕える竜っつーからにはそうなるよな。神が人を殺せ!とは言わんよな。そんな神、仕えねえわ。

愛した竜を尊重するならば、人を憎むことはやめ、人間の世界に馴染んで生活することが最良となる。竜もそう望んでいる。

しかしブリュンヒルドにとってはこれは枷だ。彼女の抱く愛に従えば、最優先すべきは仇を取ること。
なぜならば彼女は人間であり、神に仕える竜ではないのだから。

この辺もうまいよね〜。見事ですね〜。こういう人間の葛藤みたいなのがさあ、読みたいじゃないですか。
好きですねェ〜。

ヴァイオレットみ、わかる

ブリュンヒルドの境遇とか、全体的な雰囲気とか、なんとなく読みながらヴァイオレット・エヴァーガーデンがよぎったんだけど、正解だった様子。

なぜならば著者の東崎氏は暁佳奈「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を読んで小説家になったっつーわけなんよ。本人がTwitterで言ってた。

悪い意味じゃなくて、人物の心情の丁寧さとか、哀しみ、憎しみや敬愛の描き方がすごく良い感じでなんとなく似てる。
好きな感じ。
こう、登場人物が生きてると言いますか。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンの原作小説って確かにクッソ面白いからみっけられたら読んでほしい。アニメで出切ってない味が出てくるよ。

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まとめ

「竜殺しのブリュンヒルド」あらゆる要素が好みにハマってくる一作だった。
正直、ファンタジーかと思ってそこまで期待度は高くはなかったのだけど、読んでみたら印象変わったわー。

結構エグい話だし、ブリュンヒルドのやったことは許せない、共感できないと思う人もいるのだろう。
でもそれでいいと思う。正しかろうがなんだろうがそれが彼女の選択であり、我々読者は共感出来ようとできまいと傍観者なのだから。

圧倒的な哀しみと憎しみが紙面から滲んでくるのがたまんねえ。
これはねえ、気に入りましたねェ。
好きな作家が一人増えましたねェ。
次回作が楽しみやわ。

おわり。

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