クソ重くてクソ面白い小説
ども、サウナ探偵です。
「さまよう刃」by東野圭吾を読んでみたよ。
これ、面白すぎんだろうがよ…。
クッソ重くてクッソ面白えよ…。
あらすじ
長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。
「さまよう刃」東野圭吾より
会社を休みたくなるほどの本
というものがある。
徹夜本とほぼ同じ意味である。ここでやめておかないと明日がつらくなるとわかっているのにやめられない。そんな本。
俺は早起きして読書する派なので、必然的に世間でいう徹夜本は「サボり本」ということになる。
面白すぎてこのまま会社を休んでドンドン読み進めたい。久しぶりにそんな気持ちにさせられる本に出会った。
「読み進ませ力」とでも言うべきか。このページをめくる手が止まらんってのは一種のトランスというか、ハイになってるとこあるよな。
さまよう刃/東野圭吾 #読了
— サウナ探偵 (@krsw_lapin) December 23, 2021
遺族による復讐と、少年法をめぐる、警察関係者や世論の葛藤。読み進めさせる力がすごい。さすがとしか言いようがない。
ラストはやっぱりそうなってしまうんだ、という東野圭吾への失望も含めてクッソ傑作。
「法律が正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?」至言 pic.twitter.com/lAoQndycoo
どんなことがあっても殺人はいけないことか
本書の主人公長峰は、娘を強姦殺人で失った父親だ。
何者かからの密告電話により、犯人が未成年のクソガキであることを知る。そして決意する。少年法で大した罪にもならないならば、俺がこの手でブチ殺してやろうと。
紛れもなく犯罪である。それも計画殺人だ。情状酌量の余地があっても重い罪となる。これが軽くなるならば、復讐を司法が認めたことになるからだ。
しかし読者は長峰に共感せずにはいられない。本書を読んだ上で「どんなことがあっても殺人はいけないことだ」などという中身の伴わないお題目を唱え続けられる人がいるだろうか。いないと信じたい。
読者を犯罪者目線に駆り立てる天才
こうして読者の共感を得るための悲惨描写がエグい。その悲惨さと軽薄さを見せつけられる。嫌な気分になること必至である。
犯人のクソガキがどんなにクソバカで、救いようのないゴミ野郎で、死んだほうがいいのか。やっぱりこの世には居ないほうがいい奴っているなって。命の重さは同じじゃねえなって。思ってしまう。
だからこそ、仇打ちという法律違反に信念を持って挑む長峰に、読者は共感する。
法律を超えた本能の部分で、報復行動を認める事になる。
これほどの葛藤を抱えた読書体験があるか
これはある種の危険思想かも知れない。本書は法律を蔑ろにすることを推奨した危険書なのかも知れない。
しかし本書を開く間、読者は問い続けることになるのだ。
更生という2文字で未成年を守る法の下に、被害者の無念の行き場は無いのかと。果たしてそれは本当に正義なのかと。
本書を通して何が言いたかったのか
多くの読者が望んだ展開は、長峰が報復を果たすことだったろう。だが報復は果たされない。むしろ復讐の鬼となった長峰は命を落とすことになる。
俺はこの結末に、ひいては東野圭吾自身に、失望することになった。なぜこんなに救いのないことをするのか。こんなクソガキを生かしてしまうのかと。
しかし、ここで報復を成就させてしまうと、ファンタジーとして終わってしまう。
東野圭吾は、「現実はこんなものだ」と風刺したかったのでは無いだろうか。
あえてどこまでも現実的な後味の悪い結末を示すことで、読者に絶望を与えたかったのではないだろうか。
納得できなくとも、これが「現実」
読者に対し、「正義について考えさせる」とか「復讐の虚しさについて考えさせる」とか、そういった傲慢さはないように思えた。
ただただ、どれほどやりきれなく納得できなくとも、これが「現実」なのだと。
世論や良心よりも強い「法律」が全てを決めるのだと。
言いたかったのではないだろうか。
それがいかに非人道的なルールであっても。
ただし、世論や良心と同じように、法律すらも人間が恣意的に定めたルールでしかないことは、頭の片隅にとどめておきたい。
法律を完璧に守ったからといって、安全が保証されたり、心の安寧を得られたりするわけではないのだ。
法律を守ることは世間一般に大切であることは異論ないが、法律を守ることが各々にとって大切かどうかはまた別である。
まとめ
「さまよう刃」by 東野圭吾を紹介した。
重く苦しく、怒りとやりきれなさに満ちたストーリーだった。
言いたいことはいろいろあるが、是非とも本書を読んで自身で感じ取ってほしい。
最後に、本書の中で特に印象に残った記述を引用しておく。
「警察は正義ではなく法律に従っている」
「法律が正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?」
以上。
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