完全にネタバレしてるから読むつもりの人は見ないでね。読み終わったらまた来てね。
とは言ってもこの記事を読んでもストーリー自体は楽しめると思う。
あらすじ
火力勝負の戦争はコスパが悪い。時代はスパイによる””影の戦争””。スパイ養成学校から集められた7人の少女は、1ヶ月後に死亡率9割の””不可能任務””へ参加させられることになる。天才ゆえに指導力に欠ける上官クラウスは、手っ取り早く実力をつけさせるため、自分を倒してみろと少女たちに命ずる。彼女らは1ヶ月間で上官クラウスを倒すほどの力をつけることができるだろうか。果ては、不可能任務から無事に帰還することが出来るだろうか…!
出典: 俺
いやなんか面白そーじゃん。このライトノベルがすごい!2021の2位っつーには間違いなさそうだしな。っつーことで読んでみた。
う〜ん…。
つまらなくは…ない…?…いや、おもし、ええ…(困惑)
なんつっても最大の見せ場であるラストの叙述トリックが、「いや知ってたけど」としかならないのが残念すぎる。
メイントリックは作中しきりに描かれる「7人のチーム」「7人で力を合わせて」という記述が嘘で、実は8人いました。8人目が敵を背後から刺します。というもの。
この叙述トリックがバレバレというその心は、冒頭の口絵と本文のチグハグさ。
未読の人はとりあえず口絵を見ずにちぎって捨てるべし。
いやだって口絵に集合絵があってご丁寧にコードネームまで書いてあったら、本編読みながら「オ、この子はどんな見た目なんやっけな?」って口絵を見直すじゃないですか。
え、これやるよね?
で、具体的には作中に金髪の子が出てくるけど口絵の7人にどう見ても金髪の子がいない。
1人だけいない奴がいたらそいつが伏せられてるなってわかるじゃないですか。7人と言ってるけど実は8人いるんだな、と。
でも伏せられてもねえの、この子が。2章の一人称視点になんの。主役級の存在感はなってくんのよ。
これもうどう捉えたら…。
本編だけなら8人いるって気づかず読み飛ばしてたかもしれない。作中では一部を除いた少女は「〇〇髪の少女は〜」という様に髪色と口調で書き分けられている。
つまり名前を出さずに表現することで、本当は8人いることを意図的に紛らわしくしている。
とここまで周到にやってるのに本文とは無関係の口絵でバレバレなのが悲しすぎる。
口絵にコードネームと共に7人描いちゃってるのに、それに該当しない髪色、コードネームの少女が出てきたら1発でダウトなんだよな。騙されようがない。
口絵に出てない金髪の少女がダークホースかの様に出てくるも、2章で一人称視点で語られることから読者全員が認識済みなので「いやお前がいるのは知ってるけど」ってなっちゃう。
こういうのって「読者には意図的に伏せられてるけどよく読んだら確かにもう1人いる」みたいな記述じゃないと効果薄くない?っていうか叙述トリックとして機能してなくない?
「茶髪の少女は1人の様に書かれているが実は絵に描かれていない茶髪がもう1人いた」とかだったらもう大絶賛だった。
これならコードネームを作中で出してしまっても成り立つ。し、絵もミスリードに効かせられる。……なんでわざわざ金髪なんだろう…。
ラノベのいいところって絵があることで想像力が補完されて、人物描写をすっとばして想像できるところだと思うんだけど、この味方に刺される的な効果はなんなんだろうね…。
何か意図があるんじゃないかって昨日からずっと考えてるけど、この本文と口絵のチグハグさを説明出来る理由が見つからない…。
口絵の件が酷すぎるので文章そのものについて正当な評価が出来ない。
ただ、この作者、どうもラノベとかゲームとかアニメとか、いわゆるサブカルチャーには明るくないらしい。本人が好きなのは一般小説のミステリーとのこと。
たしかに絵が無かったらよかったと思うなあ…。
なぜラノベの賞に…。
とは言っても小さい仕掛けはたくさんあるので、メインの叙述トリックが台無しになってもそこそこ楽しめる。
逆に、俺がミステリーを期待しすぎという点もあるだろうなあ。なんだかんだっつってもラノベなので、本質はキャラ小説なんだな。
その点では全員キャラ立ってて書き分けされてるのでわかりやすくていい。口調が中二病ぎみでちょっと痛々しい子が多いけど(小声)。
あとリアル路線で行ってるのに一瞬で鍵開けるとかの特殊能力としか言えない描写は好みが分かれるでしょう。俺はちょっと気になっちゃった。
ミステリー的などんでん返しとかに重きを置かず、キャラ小説を求めるなら面白いと思う。
まとめる。
「スパイ教室」のおすすめポイント
・男1人に女多数の構図だけど語り手が少女でハーレムハーレムしてない。
・各登場人物のキャラが立ってるのですぐに見分けがつく。
・メイントリック以外の騙し合いはそこそこ面白い。
「スパイ教室」のモヤモヤポイント
・叙述トリックが機能してない。
・口絵さえなければ気持ちよく読めたかもしれないという惜しさ。
2巻を読むかどうか微妙な気分だけど、この1巻レベルの悲劇は起こらないでしょう。話は悪くないので気が向いたら買ってみようかな…。
おわり。