サウナ探偵です。
今日は珍しい本を紹介しちゃう。
第155回芥川賞受賞作、「コンビニ人間」だ!
いつも気が狂ったようにミステリーばっかり読んでいるから、「純文学の賞なんて、クソ面白くもない退屈な文章だろ?人の1人も死なねえ小説に用はねえよ」くらいに思ってたけど、これがどうしてなるほど面白い。
他人の顔色をうかがいながら生きている現代人に是非とも読んで欲しい一冊であった。
あらすじ
「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。
「コンビニ人間」村田沙耶香より
著者について
著者は村田沙耶香氏。本作で第155回芥川龍之介賞受賞。
他の作品は読んだことないけれど、第46回群像新人文学賞優秀賞、第31回野間文芸新人賞、第26回三島由紀夫賞など、数々の受賞歴を誇る作家さんのよう。
まあ、「コンビニ人間」の話に入ってみる。
小鳥の死骸を焼き鳥にしようとする子供
本作、とにかく主人公 古倉恵子の「異質さ」が際立つ。
ヤバエピソード1
死んだ小鳥を母親に渡し、焼鳥にして食べようと提案。
ヤバエピソード2
「誰か!喧嘩をとめて!」→スコップで殴る。
やべえ奴。
しかもそのまま成長してしまった。
いわゆるサイコパス的な思考で、共感性が欠如している。そんなこんなで36歳になっても未婚恋愛経験なし特に夢を追うわけでもなくコンビニバイト歴18年のバケモンになってしまった。
恵子自身、他者から異物視されているのは理解している。
ただ、それが「なぜ異物視されるのか」は理解できない。自分は至って合理的な選択をしているだけなのに。
でもそんな自分を見て家族が悲しむのは嫌なので(そこは共感するんかい)恵子は他者を見様見真似で”””普通っぽく”””振舞い、自らを「治して」過ごしていた。
合理的な行動は、得意だから。
楽しい同棲生活
自らを治しながら日々をこなしていく恵子に転機が訪れる。恵子の働くコンビニに新たに入店したやべえ奴2号の白羽さん。
白羽さん、ヒョロガリのハゲ。住所不定無職。 生息地、恵子の部屋のバスルーム。
茹でた野菜を塩で味わうのが主食のオーガニック男。
普通にキモすぎる。
バケモンミーツバケモンじゃねえかよ。
怪獣映画じゃねえんだぞ。
誰が好き好んでバケモンの恋愛話(?)を読むんだと、思うが、これがなかなか面白い。
世間から異物視される男女が、「他人にとやかく言われず平穏に暮らしたい」という利害の一致により成立した共同生活。「男の人と同棲してるんです」って言えば大体の人は勝手に類推して””まとも””と思ってくれる。
作中では「白羽さんの飼育」「白羽さんの餌(茹で野菜)」とか言ってるけど。それも愛情の裏返しに違いない!
多分違う。
コンビニ人間
そして物語は唐突に最終局面を迎える。
働かずに世間から身を隠し、呼吸だけして平穏に人生を全うしたい白羽っち。コンビニバイトをやめた恵子に企業の正社員として就活をさせる。働く気は無いのに求人を生き生きと漁る白羽くん。チンパン感覚DREAMERかよ。
面接会場に行く途中、コンビニのトイレに寄る白羽っち。待ってる間にコンビニのオペレーションの悪さについつい手が出てしまう恵子。もはや本能なのだった。
やっと自分の生き方をみつけた恵子。
わたしはコンビニ人間なのだ!完
事態は何も変わらないが、多分ハッピーエンド
まとめ
主人公の異常さを際立たせたり、白羽さんのキモさを惜しげもなく披露したり、やべえ奴のヤバさを160ページに押し込んだ本作。
でも俺はこの本のテーマは「自分らしい生き方」と受け取った。
爽やかテーマに似つかわしくない汚いガールミーツボーイではあるが、最終的に主人公が生き生きしてて良かったよ。恵子の自分らしい生き方はコンビニの部品として日々を過ごすことだったという話なのだ。
読んでてこいつらマジヤベェってしかならないのに読後感はサッパリしてる。なんなんだこの感情は。
読んだ人にしか共感してもらえないと思う。
「コンビニ人間」がオススメの人
・コンビニの店長
・キャベツが主食
・普通じゃねえ奴を見るとワクワクしてくる
おわり。
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