鈴と小鳥とそれから私とサウナ

「カササギ殺人事件」感想 新しさと古臭さの共存するお上品フーダニット

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

このミス3連覇おめ

アンソニーホロヴィッツ、このミス3連覇おめでとう。
2020の受賞作「メインテーマは殺人」のころから積んであった「カササギ殺人事件」。「その裁きは死」による2021受賞、3連覇の知らせとともに読み始めた。てか買ったあと存在を忘れていた。

読んだ直後の感想は、「なるほど良くできてますなぁ」って感じ。
あっちこっちに散りばめられた手がかりがカチリとハマる、なるほどこれがミステリーだなあ。と。

結構ゴツめだけど新しさもある。

こういう話

本作のポイント
・作中作「カササギ殺人事件」
・作中作と作中現実のカササギ殺人事件のリンク
・ダブルフーダニット


本作は上下巻からなり、上巻の後すぐに下巻を読みたくなるような抜群の引きがある。のだが、下巻からは全く期待したのと違う話が始まる。軽く説明する。

「カササギ殺人事件 上」
“”わたし””は小説の原稿を受け取る。人気ミステリ作家アラン・コンウェイによる名探偵アティカス・ピュントシリーズ最新作「カササギ殺人事件」。
上巻の9割5分はこの作中作の「カササギ殺人事件」がそのまま書かれている。村の屋敷で家政婦の謎の死、そして数日後に屋敷の主人が首チョンパ。
探偵アティカスピュントが犯人の見当をつけたところで上巻エンド。

うわー!いいところで終わるなあ!はやく続きが読みたい!早速下巻を読もう!

「カササギ殺人事件 下」
“”わたし””ことスーザン・ライランドは激怒した。原稿の解決編だけ無ぇじゃねえかよ。と。そして読者俺も激怒。
ってかアラン・コンウェイの「カササギ殺人事件」が作中作だってすっかり忘れてたわね。
スーザン「解決編だけ無いんだが?!ってか作者、死んでね?」
カササギ殺人事件の作者アラン・コンウェイの謎の死を追う、アンソニー・ホロヴィッツによる「カササギ殺人事件」が幕を開ける。

つまり上巻で作中の架空作家が書いた「カササギ殺人事件」をまるっと紹介し、下巻では作中現実の出版編集者スーザンが解決編の原稿と作者の死を追う入れ子マトリョーシカミステリーだ。
架空と現実、2つの殺人事件の謎解きが下巻のラストでまとめてなされるのが面白い。
こういう作中作がまるっと全編入ってるのは綾辻行人「迷路館の殺人」を思い出したわね。

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無理やり変態読みをさせられる

実質的には、小説Aを解決編直前まで読んで放置して、別の小説Bを最後まで読んで、放置してた小説Aの解決編を読む、という読み方と同じだ。
こんな変態的な読書をする奴はそうそういないだろう。だが「カササギ殺人事件」に限っては全員がこの変態的な読み方をさせられることになる。

正直読み終えた瞬間は、「いや、1作で2つの謎解きとか言われても、上下巻だし実質2作読んだのと一緒なんですけど…」とか思ってたけど、上記のように考えるとなんだか面白い気がしてきた。

ミステリってこういうもんだよな

作中作アランコンウェイの「カササギ殺人事件」は古き良きカントリーフーダニット感でエラリークイーン風味を醸しつつ謎解き含めて満足した。(アガサクリスティリスペクトらしいけど、「そして誰も〜」以外読んで無いのでわからん。俺はYの悲劇を感じ取った)

けどこれを内包したアンソニーホロヴィッツの「カササギ殺人事件」のほうは微妙に納得してない感。

面白かった気もするし、面白いというより上手いって感じだった気もするし。超絶技巧ギタリストすげーでも別に好きな曲では無いわ的な。
でもまあフーダニットってそういうもんだな。
手垢のついたフーダニットよりも飛び道具的なミステリーを期待しすぎちゃってるとこはあると思う。

てか作中作パートではお上品フーダニットしといて、作中現実ではセルフピー音のド下品言葉遊びキメてんのが草すぎる。

アンソニーホロヴィッツ自体は一作めなので、「メインテーマは殺人」も近いうちに読んでみようかな。と、思いました。

結論としては、メチャクチャおすすめってわけでもないけど、読んで損はない作品だった。


ここからネタバレ


なんとな〜くエラリークイーン「Yの悲劇」みてえだな〜と思ったのは、多分舞台が田舎のお屋敷で、犯人が頭のイカれたガキンチョ殺人犯だったからかな?たぶん。

おわり。

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