アニメで終わるのはもったいなさすぎ
ども、サウナ探偵です。
京アニの最終兵器「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に原作小説があるって知ってた?
これまじバチクソサイコーだから読んだ方がいいぞ。
アニメで終わらすにはもったいない。もっと味の出る物語だよこれは。
あらすじ
「自動手記人形」とは、依頼者の深層心理を読み取り、手紙などを代筆すること生業とする、郵便社の従業員である。
CH郵便社に所属する自動手記人形の1人ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、かつて少女兵だった。
戦場で道具に徹した彼女は、人間的な当たり前の感情を持たない。終戦間際、彼女を育てた上官ギルベルトから「あいしてる」と言われるが、彼女には意味が理解できなかった。
その言葉の意味を理解するため、終戦後、感情のない彼女は他者の感情をすくい取る自動手記人形の職業につくことになる。
様々な事情を持つ依頼者、同僚、そしてかつての上官との交流を通して、兵器から大人の女性へと成長していくヴァイオレットの半生を描く物語。
出典・俺
小説だからこその繊細な表現
本作はアニメ化されている。というよりアニメの方が断然有名だよね。
小説を読もうって人はアニメを見て、それから原作も読んでみようって思った人がかなり多いんじゃないかな。
その判断、大正解です。
この手の大きなアクションや展開のない、言ってみれば地味な話は、人物の心情描写が鍵となってくる。
アニメでは映像美や演出でこれを表現していた。しかしそれは比喩であり、文字情報ほど確実なものではない。
アニメはアニメにしかない味わいがある。だが本作には、小説を読んで初めて出てくる味がある。
後述するが、アニメとのストーリーラインや登場人物の違いを含めて、やっと全部の味が出てくる作品だと俺は断言したい。
つまるところ、小説版を是非読んでいただきたいのだ。
アニメとの相違点
アニメは、原作の絶妙な空気感を見事に映像化している。
が、原作とアニメでは大きく異なる点がいくつも存在する。
大きくは以下2点だ。
(1)構成が違う
(2)登場人物が違う
順を追って説明しよう。
構成の違い
アニメではヴァイオレットが自動手記人形になる過程から始まり時系列順に成長が描かれる。
だが小説は違う。
上巻の最初の話は劇作家オスカーさんの話である。
あのおそらく1番有名な傘持って水面を歩くシーンの話である。
そして次の話はいきなりアン・マグノリアの話である。
あのおそらく”泣ける”と言われる1番の所以であるお母さんから無限に手紙が届く話である。
アニメではヴァイオレットが自動手記人形となる経緯から成長していく様子が描かれる。
一方小説ではヴァイオレットは”初めから”自動手記人形である。
そして視点人物は依頼者となっている。
小説はヴァイオレットの成長物語として始まるのではない。
さまざまな背景を抱えた依頼者がヴァイオレットと関わることで心境の変化を抱く、単話完結のおとぎ話として始まるのである。
「精神安定剤ヴァイオレットエヴァーガーデンの効果・効能」といった具合である。
多くの依頼者と関わり、依頼者に変化・心の安寧をもたらす一方、自身は淡々としているどこか浮世離れしたヴァイオレットエヴァーガーデンという存在が漠然と読者に示される。
そして上巻の後半から下巻の前半にかけて、唐突に戦争の話が始まる。
つまり、ヴァイオレットの背景や過去が語られるのである。
アニメはヴァイオレット視点で物語を進めていくが、小説は傍観者としてヴァイオレットを眺めることになる。
この構成・視点の違いによる受け取る印象の違いは、アニメと小説で大きく異なる点であろう
登場人物の違い
アニメと原作は、構成以上に登場人物が異なる。
具体的にはアニメ版の同僚エリカとアイリスは原作には登場しない。よって彼女らの話は全てアニメオリジナルである。
そして原作には、アニメに登場しないラックスという少女が登場する。カルト教団で""半神""として生贄にされそうになってたところをヴァイオレットに助けられ、CH郵便社で社長秘書をしている。この話、結構好きなんよね。
さらにアニメ版で頼りになるお姉さんポジションのカトレアさんは、原作ではじゃじゃ馬小娘とでも言うべき性格である。ヴァイオレットと同等、もしくはより幼いと言ってもいいくらい。
あとはホッジンズ社長の軍属時の階級とかいろいろ細かいとこが違う。
こんな感じで、いる人、いない人、性格が全然違う人、さまざまである。
逆にこんだけ登場人物が変わっていても本質は変わらないのは、本作はまさに""ヴァイオレット・エヴァーガーデン""なんだなと。
根本的にはヴァイオレットのお話なんだなと。
そこはブレてねえなって。
予定調和なのにこのおもしろさ
本作、基本的にあまり予想外のことは起こらない。
ハイハイそうなりますよね。やっぱりね。お約束だよね。みたいな感じ。いわゆる予定調和。
本作を良しとしない派にはそのような向きがある。「お涙頂戴が露骨すぎる」「全然泣けない」といった。
いや、俺もそう思うけどね。
これはマーケの失敗な気がしないでもない。
「今1番感動できるアニメ!」みたいのは普通に嘘だと思う。
アニメは映像作品に合わせた脚本の改変(適応)もうまく効いたのだとは思うけど、大部分のヒット要素は良くも悪くも映像の暴力だった。と、思う。
話は逸れたが、要はこの物語には意外性がない。
なのになぜここまで惹きつけるのか。
その大きな理由は著者の文章力と人柄にあると思っている。
是非先入観なしに読んでみていただきたい。
著者の描写力と構成力に圧倒されることだろう。
本作はページ割まで緻密に計算されているらしい。文字を読んでいるのに映像作品を見ているような感覚になる。
俺は上巻のとあるシーンで鳥肌がゾワゾワ立ってしまった。なかなかあることじゃない。
もはやこれは文芸の暴力だ。
暁佳奈氏の、繊細ながらもエンターテイナーとしての素質の高さには脱帽せざるを得ない。
まとめ
アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の原作小説について紹介した。アニメは多くの人が知っていると思うが、原作小説があることを知らなかったという人も多いだろう。
そんな人に原作に興味を持ってもらえたら幸いである。
アニメ版が好きだったら小説版を読まないのは明確に損失だと声高に主張したい。
少なくともアニメ版のファンは絶対に読むべきであると。
ただ書店でほとんど見かけたことがないので入手が難しいかもしれん。
ほんで話は変わるが、暁氏の新作「春夏秋冬代行者」がこのラノ2022で2位にランクインしていた。
俺の中ではもう「安心と信頼の暁佳奈」という位置付けになっているので、本作も確実に面白いことだろう。
いつ読もうかワクワク。
おわり。
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