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八目迷「夏へのトンネル、さよならの出口」感想&ネタバレ考察 エモみの塊青春小説 アニメ映画化

2021/12/16更新

【祝映画化!】


この表紙はズリーだろ、全員読みたくなっちまうやつじゃん。




夏!青空!入道雲!制服!

どうも、サウナ探偵です。
激エモサマーSF小説「夏へのトンネル、さよならの出口」を紹介しよう。
まあネタバレっつっても核心には触れてないし別にミステリーってわけでもないからね。特に問題ないと思います。


冒頭の通りよ。こんな激エモの表紙、全員好きなやつだし本屋で見かけたら手に取っちゃうでしょ。購買意欲そそりすぎでしょ。

夏!青空!入道雲!制服!っつってね、イメージ通りっすわ。ただし、SF。
てかよく見たら女の子(あんず)だけ水面に反射してねえのよ、この表紙、今気づいたわ。どういうことだこれ。


あらすじ要約

まずは簡単にあらすじを。

5年前、自身も関わる不慮の事故で小学生の妹を無くした高校生、塔野カオル
母親は蒸発し、血の繋がらない父親と死んだような2人暮らしを送る。

ある日の夜、散歩をしていると偶然に「欲しいものがなんでも手に入る代わりに歳をとる」と噂のウラシマトンネルを発見する。これを使えば妹に再会できるかもしれない…。

一方、学校では、孤高の転校生、花城あんずの喧嘩を仲裁したことから、カオルは彼女と協力関係になる。カオルは妹を取り戻すため、あんずは特別な存在になるため、それぞれの理由を抱え、2人でウラシマトンネルの調査を始める…。

出典: 俺

SF要素の妙

と、あらすじから分かる通り、この作品、SF。
「ウラシマ効果」って聞いたことあるかわからんけど、要は早い速度で移動するほど体感時間が遅くなるっていう理論。宇宙空間で光速に近い速度でワープすると、地球では数十年経ってる、みたいな。詳しいことはアインシュタインに聞いてくれ。

でも本作のウラシマトンネルっつーのは別に宇宙とか光速とかは関係なくて、「入ってる間は体感時間が遅くなるトンネル」というもの。つまりトンネルにいる間に外部の時間の進みが早くなる
だから歳をとるっていうのはちょっと違う。逆に歳を取らない。噂って適当だよな。

原理とかは知らんし解明もされない。その辺は大して重要じゃない。

で、本作で言うところの「時間の経過」っていう現象が意図しているのは、年齢がどうこうという単純な話ではない。
おそらく、「何かを手に入れるために(外部の時間経過によって結果的に)他の全てを失う」というところにあると思う。その覚悟があるのかと。

それを強烈に印象付けられる描写があって、 いちいち「トンネル内部で〇〇分経過、外では□年とXXX日経過」って書かれてる。これがそら恐ろしい。
当然だけど行ったきりではないので、すぐに引き返すとしてもこの倍の時間が経過してしまうっつーのがミソよね。


漫画もあるらしい。

本質的なテーマはアイデンティティの獲得

とまあ本作はSF要素を含むんだけど、本質的には各々の成長物語の形をとっているように思った。
つまり、テーマは「アイデンティティの獲得」
学校での人間関係、家庭の事情、トンネルの探索、そういった各々の場面で登場人物たちはそれぞれに成長を遂げる。

主人公塔野カオルは過去の事故や家族関係もあり、何にも執着を見せない、かといって落ち込んだりするわけでもない抜け殻のような少年だった。彼はウラシマトンネルに入ることで、心境に変化を起こす。

花城あんずは夢を目指して親に見捨てられ、強がりながらも弱さを抱えた少女だった。彼女はウラシマトンネルに入らないことで、自信や夢を手に入れる。

川崎小春はクラスの中心人物で、不良とも付き合いのある女王だった。しかしそれは自信のなさの裏返しだった。
彼女はカオルやあんずと関わることで、強がることをやめ自分を変えようとする。


で、こうして見ると、あくまで主人公カオルを変えたのがウラシマトンネルとかいうオカルトSF要素だっただけなワケ。

この物語の中心人物は、みな本編を通してアイデンティティを獲得する流れになっているのがわかると思う。

一方で、アイデンティティを失ったままの者(カオルの両親)がハッキリとわかる構造になっている。
おもしろいね。


で、

話もいいんだけどさ


キャラデザがいいんだわ。
急に俗な話になって申し訳ないんだけどさ。
更生前の川崎小春、巻頭の口絵に小さくちょろっといるだけなんだけど、このキャラデザが刺さっちまってね。
でもここにしか出てこねえの。1枚だけ。もったいねー。
本編の挿絵では黒髪メガネちゃんになっちまってるしな。

いい(確信)

「夏へのトンネル、さよならの出口」より


花城あんずのデザインもええねん。「孤高の黒髪ロングセーラー服JK」とかいう同じコンセプトのキャラクターが5億人くらいいそうな感じではあるんだけど、ええねん。そういうの好きやねん。

い、いい。

「夏へのトンネル、さよならの出口」より


男連中は知らん。


まとめ

八目迷「夏へのトンネル、さよならの出口」について感想まじえて紹介させてもらった。
タイトルの通り、夏の田舎町を舞台にした、ほろ苦くも爽やかさに溢れる青春小説(SFもあるよ)ってかんじ。
新海誠好きとかには合うんじゃないかな。あと細田守とかね。


にしてもまじでガガガ文庫の単巻作品ってハズさねーわ。最近ガガガ文庫の棚で単艦巻作品をジャケ買いするのがライフワークとなりつつある。
著者の新作も買ってある。こっちもSF要素ありみたいな感じらしい。いつ読もっかな。ワクワク



面白い単巻作品、漁ってこ。


おわり。

八目迷氏の他の作品
ミモザの告白は必読級。続編も決定している。

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