互いを逃げ場に選んだ人達が、互いに狂っていく物語。
大好きな小説家を殺すなよ
ども、サウナ探偵です。
ご無沙汰しております。しておりません。僕は常にインターネットにいます。
斜線堂有紀の「私が大好きな小説家を殺すまで」をご紹介しましょう。
タイトルが盛大にネタバレ過ぎるだろ。
なんで殺すんだよ。
大好きな小説家を、殺すなよ。
あらすじ
毒母に夜7時から朝7時まで押し入れに閉じ込められる小学生梓。彼女の心の支えは、図書館で読んだ小説を頭の中でなぞること。
母親に見捨てられた梓は、大好きな本を抱え線路への投身自殺を決意するも、踏切で二の足を踏む。その時見知らぬ青年に声をかけられる。
「その本持って死なれると迷惑なんだよね」
声をかけてきた青年は、梓が愛してやまない本の著者、遥川悠真だった。
全てが歪んでる
歪みに歪んでる。これもうファズだろ。
まず書き出しからしてアクがすげぇよ。
『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は遥川悠真に死んで欲しかった』
なんだこのパワーセンテンス。
ほんでこれだけでこの一作を象徴的に表現しているよ。
絶望的な境遇の中、藁にも縋る思いで何度も心の中で読み続けた小説。そう、手元になくても思い出して読めるほどに彼女はそれを大切にしていた。
最低の親に育てられ、他者の痛みに共感できる。
そんな彼女が、憧れの小説家に対して「頼むから死んでくれ」と思うまでになるのが本作。
これはもはや、信仰だ。
歪な救済と逃れえぬ絶望
本作の構造を一言で表すと『共依存』
互いに救済であり、絶望でもある。
依存とは、自分の存在意義・アイデンティティを他者に委ねてしまうことだ。
それが双方向。ヤバいね。地盤、グラグラじゃん。
彼らの関係は、初めから共依存の様相を僅かに見せていたが、決定的になったのは梓がゴーストライターとなったこと。
このくだりが本当にヤバい。
遥川に元気を出してほしくて梓が遥川のためだけに書いた小説。自分が書くより遥かに面白いそれ読み、完全に折れる遥川。
いやーきついっすね。
100%の善意が相手の息の根を完全に止める瞬間ですわ。
最後はタイトルの通りになる。
どんな経緯でタイトルのようになるのかは是非読んで確かめていただきたい。
まとめ
斜線堂有紀のMW文庫作品はどれも歪んでて絶望的なんだけど、これは1番かもしれんね。
「恋に至る病」よりも個人的にはエグいと感じた。
いいですよ。
こういうの、もっと書いてくれ。
おわり。
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