鈴と小鳥とそれから私とサウナ

五転六転「悪寒」by 伊岡瞬 感想 中年男性の苦悩と愚かさ ネタバレなし

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顔つきが次々に変化する小説

ども、サウナ探偵です。
「悪寒」by 伊岡瞬を読んでみたので感想交えレビューなど。

ここ最近読んだ一般文芸では頭ひとつ抜けた面白さだったなー。

プロローグは法廷シーン。リーガルサスペンスかな?と思いきや、大企業から都落ちして地方の出向先でいじめられてる中年男性の話が始まる。じゃあ半沢直樹みたいな企業ミステリーかな?と思いきや、妻が人を殺したという連絡が入り…。

読み進めるごとにどんどん顔つきが変わっていく、全く飽きない小説だった!

あらすじ

大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。“家の中でトラブルがありました”数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。殺した相手は、本社の常務だった―。単身赴任中に一体何が?絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ。
「悪寒」伊岡瞬より

読み進ませ力

この作品、何がすごいって「読み進めさせ力」が凄すぎる。読んでて疲れない。ストレスがない。スルスル読んじゃう。非常に読者フレンドリーな小説。

かといって内容が薄いということは全くない。

同族経営企業の闇、中年男性の鈍感さ、愚かさ、家族、兄弟、妊娠、殺人事件の真相、など、ともすれば詰め込みすぎと思われてしまうほどの要素が含まれている。それらが互いに全く邪魔をせず、結末に向かって収斂していくのは見事としか言いようがない。

構成がうますぎる

本作は第一部では社会派ミステリーの基本的な作りになっている。
つまり、事件に巻き込まれた一般人が、勝手に捜査して、あちこち飛び回って、徐々に情報を集めていく、という流れ。

そして第二部では妻の公判が始まる。のだが、裁判が進んでるにも関わらず、関係者が次々に証言をひっくり返す。しかもみんな好き勝手に違うことを言う。一体何が真実なんだ。

この前半後半で色が変わりつつも褪せないスピード感よ。
止まるんじゃねえぞ…。

テーマは「家族」

とまあ先述したようにいろんな要素があるんだけども、最終的にはテーマは「家族」だったのかな、と。「信じる」「真実」と言う言葉がしきりに意識に刷り込まれてくる小説だった。

妻はどうなりますか?娘は逮捕されますか?としきりに「結果」を気にする主人公に対して、「大事なのは真実を突き止めることでしょう」と諭す真壁刑事(他作品にも出てるらしい?)の言葉が印象的やったね。

そんでまあ””真実””にたどり着くまでの主人公のおっさんの愚かなことよ。解説にもあったけど、「そんなん言うな!!」って止めたくなる。大部分は黒幕のクソがひっかき回したせいではあるけど、おっさんもいわゆる大企業病で色々見えてなかったとこがあったな。


伊岡瞬、気に入りましたわ。次は「代償」を読みたい。本当はこっちのが先に読むべきだったみたいだけど。

おわり。

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