苦しみ抜いた成果が認められないことが、続けたい物語を続けられない悔しさが、どれほどの苦悩だろうか。
サウナ探偵ですよ。
今日は「小説の神様」を紹介するぞい。
あの「medium 霊媒探偵城塚翡翠」で今ノリに乗ってる相沢沙呼氏の作品だ。
根暗少年と完璧美少女のボーイミーツガール。みんな大好きなヤツだろ??
あらすじ
僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。 物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!
引用元:講談社タイガ
著者
著者は相沢沙呼氏。
2019年のバケモン級大作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」が記憶に新しい。というか、それがきっかけで過去作に手を出したのである。
medium〜は氏の作品の中でも新たな挑戦だった(基本的に人が死ぬ話は書かない模様)とのことで、過去作がどんなのか気になりまくり。
mediumの記事はこちら
www.sauna-detective.com
人間が書けてなさすぎる
ではまず、本作「小説の神様」の登場人物を紹介してみる。
主人公 千谷一也(ちたにいちや)
中学生で作家デビュー、売れない作家、地味メン、日陰、コンプレックスの塊
ヒロイン 小余綾詩凪(こゆるぎ しいな)
中学生で作家デビュー、売れっ子作家、容姿端麗、陽向、自信満々
何をさせてもそつなくこなす小余綾。モデル体系の超美人。運動神経抜群。著作は重版。教室では常に誰かに囲まれている、陽向の人間。まるでラノベの主人公。そんな人間いるはずがない。
一也の言葉を借りるならば、「人間が書けてなさすぎる」。
そんな完璧美少女と根暗少年が、編集者からの提案でチームになって小説を書き上げる。お前がプロット、俺が執筆。その苦楽を描いた作品が「小説の神様」だ。
あなたは何のために小説を書いているの?
作中、何度も出てくるセリフ
「あなたは何のために小説を書いてるの?」
千谷一也は答える。
「お金のために決まっているだろう」
一也の妹は病気で入院しているのだから。売れない小説に意味はない。読者の読みたいものを書かなければ。書きたいものじゃない、求められ、消費される「商品」を作るのが、小説家の仕事。書きたいものだけ書いても、売れなければその物語を続けることはできなくなるのだから…。
小説の神様(?)が見え、何を書いてもバンバン売れる小余綾は、小説への希望を失った拝金主義の一也を軽蔑するのであった。あなたに小説を語る資格はない、と。
それでも前へ
しかし合作の刊行スケジュールは決まっており、やるしかない。言葉をぶつけ合うたびに、すれ違いながらもお互いを徐々に理解する2人。
本作の本質は千谷一也が「小説の神様」を見出し、小説を書く理由を明確に自覚するまでの成長物語だ。
何かにつまづいてる人、何かに挫折した人、何かを諦めようとしている人に活力を与えてくれる小説である。
あと、妹の雛子ちゃんが良心すぎる。
橋本環奈で映画化
本作、実写映画化される。
小余綾詩凪を演じるのは千年さんこと橋本環奈。
微妙に、違うんじゃねえか?という感は拭えないものの、まあそれは見てからのお楽しみやね。かなりアニメ的、ラノベ的な言い回しがある本作を、どうやって実写で違和感ない形にするのかは不安であり楽しみな点でもある。
まとめ
相沢沙呼氏の「小説の神様」を紹介した。
しきりに「小説を書く意味」を問いかける。読者は自然に「小説の神様」は何のために書かれた小説なのかと考え、そして理解することになる。
何かを創作する人、何かにつまづいている人に読んで欲しい一作だった。
しかし三冠受賞の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のあまりの面白さに手を出した過去作だが、相沢氏の本領はこちらの模様。人が死なない小説も、いいもんだね。
- 作者:相沢 沙呼
- 発売日: 2016/06/21
- メディア: 文庫
「小説の神様」がオススメの人
・絶賛挫折中
・クリエイティブ業の人
・medium作者の別の一面も知りたい
おわり。
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